今日の患者さん
2001年1月23日病院で検査の仕事をしています。
人からは「エコー屋」とよばれています。
昨日時間外に残って片付けごとをしていたら
部屋の内線がなりました。
誰だよこんな時間によお、と思い出ると
「もしもし、あれ、ICUじゃないの?間違っちゃった」
その声は私の好き好きな鳥くんです。
「ちーがーいーまーすー。エコー室ですけど」
「あれー。あ、でもまたいたんやねえ。今紹介で
急性腹症がきたんやけどー」
急性腹症とは原因のまだわかっていない急な腹いたの
ことを言います。
そういう人の原因を探すことも私の重要な仕事のひとつです。
「あーそー。今からみてもいいよー」
病院内にいる限り、そういう患者を受け持った先生に
見つかるとそのまま拉致されることもままあるので
そのように聞き返しました。
「うーん、どうしよーかーなー。とりあえず入院させるから
明日でいいやー。明日お願いしとくねー」
といって電話は切れました。その日はそれで帰りました。
そして今日の朝また鳥くんから電話が入って
「昨日の人、案外データが悪いんだけどいつ頃できるかなー?」
聞かれました。
「どんな様子なの?」
と聞くと
「うん、イレウス」
イレウス。
日本語で言うと腸閉塞です。ありゃー、緊急系だわー。
とりあえず午前中のできるだけ早い時間に目標をたてると約束して
朝はよーから並んで来ている外来患者をちぎってはなげ、ちぎってはなげ
(ってことはありませんが)終わらしていきました。
午前中って言ってもぎりぎり昼前になってやっとその
イレウスの患者さんまでいきつきました。
本人はいたって元気で、部屋までは車椅子できたものの
部屋に入るととっとと自分で歩いてベットにあがってました。
「腹やらもういとうない」
とおっちゃんはぺらぺら好きなことをしゃべっていました。
ま、そう言っても腹の中は外からはわからんからね、とか言ってなだめて
検査開始。
確かに軽度拡張した小腸が画面にいっぱい映し出されます。
それを見た時点で
「あー多分appe(虫垂炎)じゃー」と直感しました。
大体直感が合うことが多いのですが、何分占い師とかではないので
根拠を示さねばなりません。
エコーをして、虫垂炎としても根拠を示すとは。
腫れた虫垂の写真をとること。それひとーつ。
でもおっちゃんは太鼓腹のうえに小腸が張っている。
おまけにぺらぺらしゃべっているので腹が動く。
「ちょっとだまっとってね」とそれとなく言っても
2分と経たずにまたしゃべりだす。だまれーっ!
もーー、と諦めかけた頃にぐるぐる動く小腸の下敷きになった
虫垂がぼわーんと見えてきました。
もう半分溶けたようになった様子がおぼろげながらわかります。
糞石もある。周囲脂肪識炎もあり。
この10−15分の検査の間に、結論を決めて検査を
終了せねばなりません。
「よっしゃ、appeでいこう」
正直言ってこういうときは、ええい、ままよ状態です。
絶対これです、なんて言える時なんてそうそうない。
この結果で患者さんが腹を切られたり、また逆に手術が遅れたりする
と思ったら、この「ええい、ままよ」の時間がいつも
私の胃痛の時間です。
とりあえずまたおっちゃんは元気に病棟に帰りましたが
鳥くんに電話して「あたしはappeだとおもう」と報告しました。
「俺もそーかなーってデータ的には思ってけど、今全然痛みがないやろう?
どーーかなーーーー」
と言っていましたが、とりあえず外科紹介になりました。
外科の先生も鳥くんと同じでデータとしてはappeで合うんだけど
いまひとつ身体症状が弱いなーってな感じだったそうです。
「でさ、だいやつやこ(仮名)さんのエコー所見に願いを託して
切ってみる事にしたから」
などと殺生なことを言う。
午後3時手術開始。4時半頃には結果がわかるでしょうとのこと。
その間の長かったこと。
で、結果は。
6時頃鳥くんがカンファの部屋にだーっと入ってました。
にこにこしてた。
「いやーappeで正解。おまけに破れとった。opeってよかったよー。
相当迷ったんやけどねー」
って言葉を聞かせてくれた。
よかったー。
よかったー。
そのあとカンファに集まったお医者さんたちと
いやー、つくづくappeって難しいもんよね、appeにはじまり
appeに終わるって感じよね、俺たちの仕事ってさ。
なんて話にそーっと混じって
(そうそう)
とうなずいていたのでした。
人からは「エコー屋」とよばれています。
昨日時間外に残って片付けごとをしていたら
部屋の内線がなりました。
誰だよこんな時間によお、と思い出ると
「もしもし、あれ、ICUじゃないの?間違っちゃった」
その声は私の好き好きな鳥くんです。
「ちーがーいーまーすー。エコー室ですけど」
「あれー。あ、でもまたいたんやねえ。今紹介で
急性腹症がきたんやけどー」
急性腹症とは原因のまだわかっていない急な腹いたの
ことを言います。
そういう人の原因を探すことも私の重要な仕事のひとつです。
「あーそー。今からみてもいいよー」
病院内にいる限り、そういう患者を受け持った先生に
見つかるとそのまま拉致されることもままあるので
そのように聞き返しました。
「うーん、どうしよーかーなー。とりあえず入院させるから
明日でいいやー。明日お願いしとくねー」
といって電話は切れました。その日はそれで帰りました。
そして今日の朝また鳥くんから電話が入って
「昨日の人、案外データが悪いんだけどいつ頃できるかなー?」
聞かれました。
「どんな様子なの?」
と聞くと
「うん、イレウス」
イレウス。
日本語で言うと腸閉塞です。ありゃー、緊急系だわー。
とりあえず午前中のできるだけ早い時間に目標をたてると約束して
朝はよーから並んで来ている外来患者をちぎってはなげ、ちぎってはなげ
(ってことはありませんが)終わらしていきました。
午前中って言ってもぎりぎり昼前になってやっとその
イレウスの患者さんまでいきつきました。
本人はいたって元気で、部屋までは車椅子できたものの
部屋に入るととっとと自分で歩いてベットにあがってました。
「腹やらもういとうない」
とおっちゃんはぺらぺら好きなことをしゃべっていました。
ま、そう言っても腹の中は外からはわからんからね、とか言ってなだめて
検査開始。
確かに軽度拡張した小腸が画面にいっぱい映し出されます。
それを見た時点で
「あー多分appe(虫垂炎)じゃー」と直感しました。
大体直感が合うことが多いのですが、何分占い師とかではないので
根拠を示さねばなりません。
エコーをして、虫垂炎としても根拠を示すとは。
腫れた虫垂の写真をとること。それひとーつ。
でもおっちゃんは太鼓腹のうえに小腸が張っている。
おまけにぺらぺらしゃべっているので腹が動く。
「ちょっとだまっとってね」とそれとなく言っても
2分と経たずにまたしゃべりだす。だまれーっ!
もーー、と諦めかけた頃にぐるぐる動く小腸の下敷きになった
虫垂がぼわーんと見えてきました。
もう半分溶けたようになった様子がおぼろげながらわかります。
糞石もある。周囲脂肪識炎もあり。
この10−15分の検査の間に、結論を決めて検査を
終了せねばなりません。
「よっしゃ、appeでいこう」
正直言ってこういうときは、ええい、ままよ状態です。
絶対これです、なんて言える時なんてそうそうない。
この結果で患者さんが腹を切られたり、また逆に手術が遅れたりする
と思ったら、この「ええい、ままよ」の時間がいつも
私の胃痛の時間です。
とりあえずまたおっちゃんは元気に病棟に帰りましたが
鳥くんに電話して「あたしはappeだとおもう」と報告しました。
「俺もそーかなーってデータ的には思ってけど、今全然痛みがないやろう?
どーーかなーーーー」
と言っていましたが、とりあえず外科紹介になりました。
外科の先生も鳥くんと同じでデータとしてはappeで合うんだけど
いまひとつ身体症状が弱いなーってな感じだったそうです。
「でさ、だいやつやこ(仮名)さんのエコー所見に願いを託して
切ってみる事にしたから」
などと殺生なことを言う。
午後3時手術開始。4時半頃には結果がわかるでしょうとのこと。
その間の長かったこと。
で、結果は。
6時頃鳥くんがカンファの部屋にだーっと入ってました。
にこにこしてた。
「いやーappeで正解。おまけに破れとった。opeってよかったよー。
相当迷ったんやけどねー」
って言葉を聞かせてくれた。
よかったー。
よかったー。
そのあとカンファに集まったお医者さんたちと
いやー、つくづくappeって難しいもんよね、appeにはじまり
appeに終わるって感じよね、俺たちの仕事ってさ。
なんて話にそーっと混じって
(そうそう)
とうなずいていたのでした。
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